寝言は寝てから

荒川弘ファンのてきとうなおしゃべり。

第30回東京国際映画祭 曽利文彦監督「ハガレン」トークイベント レポート~!

第30回東京国際映画祭 曽利文彦監督「ハガレントークイベント 行ってきました!
おもしろかった~!

http://2017.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=353
会場:六本木アカデミーヒルズ 49F タワーホール
ゲスト:前田有一映画批評家
MC:松澤千晶フリーアナウンサー

18時開場19時開演
会場は横23席縦6列でほぼ満員。うち、プレス席6、関係者席5~、TIFF公式席2。
男女比ほぼ半々。やや女性が多い?
若手映画人&一般向けトークショーなので、業界人ぽいオシャレな人が多い。ほか、曽利監督ファン、ハガレンファン、山田君ファンなど。

曽利監督登場。拍手。
まず、オープニングで今映画館で流れているトレーラー。
続いてロスとパリのエキスポで流した6分ほどの映像。

曽利:エキスポはすごい熱気。ハガレンファンが熱狂で、キャラが登場するたびにワーッと。
日本の反応は?
曽利:試写会をやったが、反響があってホッとした。誉めるキャラが人によって違う。誰か誉めるわけではなく、みんなバラバラ。嬉しかった。

前田氏登場。
前田:原作ファンなんで正直不安だった。なんで日本人?(客席笑い)
予告見てもまだ慣れない。エドじゃなくて山田じゃん、と。(客席笑い)
でも試写を見て、悔しいことにオープニングのアクションシーンが終わったくらいに慣れてしまった。結構没頭した。漫画は素晴らしいけれど、映画は音や俳優の感情があり、違う感動が起きる。泣ける場面もあった。
私は別に漫画の実写をやるなとは言っていない。日本は予算で映画がチープになってしまうのが嫌だ。
私はマンガが好きで、世界ナンバーワンの日本のコンテンツだと思う。でも映画も好き。だから厳しいことも言う。映画関係者には敵のように思われているかも(笑)

■実写にあたり気を付けたことは?
曽利:ハガレンは27巻の長い話だから2,3時間に押し込めることはできない。けれど映画として1本完結させたかった。なので3分の1のエピソードで1本にまとめた。
3分の2残っているので、新しいのを作ろうと思えば作れるけれど、まずは1本で作りたかった。

前田:キャストなんで日本人?(会場笑い)

曽利:自分の中でもそれはある。(会場笑い)
けれども、原作は日本人が描いた世界。ソウルが日本人。欧米とは文化が違う。兄弟の関係性が違う。Lookを合わせてもheartがずれちゃう。ハリウッドで作ったらガワがすごくてもソウルが違う。
日本のコンテンツだから日本語の台詞がナチュラル。ハリウッドで作って英語の台詞を日本語に翻訳しても何か違うはず。
10分から15分我慢してもらえば(前田:我慢するんだw)、すぐ慣れる。

前田:確かにあの兄弟は日本の下町のそれみたいなところがある。日本人のコンテンツ、納得はする。

曽利:海外では原作の、欧米に無い文化を読み取っている。逆に日本人で作られて喜んでもらえるのではないかと。


■会場には原作ファンも
曽利:この作品は原作ファンがすごく多い。もちろん原作を知らない人もいる。両方に楽しんでもらいたい。原作そのままトレスすると再現フィルムになってしまう。原作に近いけれど、原作ファンもちょっと新鮮に感じてもらえるよう作った。えー!?ってことにはなっていない。知らない人にはもちろん1本の映画として楽しんでもらえる。

前田:原作ファンも、映画で同じ話をしてくれとは思っていない。漫画のファンとして、映画が縮小再生産にはなってほしくない。コアなファンが喜ぶものは作れる。でもそれは先細りになる。知らない人に広めてほしい。
アメコミはまさにそう。バットマン、アイアンマン、読んだことないけれど、ダークナイトはこれは面白い!と。新たなファンができる。映画はそういうメディアだ。
拡大再生産をしてほしい。日本の漫画・アニメは世界でナンバーワンだ。だからやる気が無い奴は手を出すなと。(会場クスッ)

曽利:気持ちだけはまあ。漫画は世界ナンバーワンの日本のコンテンツ。文化を広めるために実写は訴求力がある。映画は世界中が観る、違う世代に浸透していく。コミック、アニメ、実写、いろいろなルートで日本を良く知ってほしい。

前田:コアなファンも喜ぶ。一番重要なのはコアなファン。190カ国?すごいな。
曽利:批判もあると思うがまず観てほしい。無理に誉めなくていいし、無理にけなすこともない。日本発信だから、日本のファンに認めてもらえたら、海外に出ていける。


■苦労した点は?
曽利:実写は実写の良さがある。実写のほうが伝わることがあるので、実写の良さを前面に出す。アニメにかなわない部分をがんばってもむなしいだけ。この物語は人間のドラマ。原作漫画はとても人間的。だから人が演じられないわけがない。

前田:世界観があるからVFXが必要だけれど、人間の心を動かすのはCGじゃない。ドラマが描けているかどうか。

VFXについて
前田:今やっている猿の惑星はハリウッドのVFX最高峰。猿のキャラクター。けれどCGキャラと生身の人間が格闘する、ハグするシーンはあまり無い。
ハガレンではCGのアルフォンスと山田君のエドが違和感なく喧嘩したり、エモーショナルなシーンもある。ハリウッドは逃げてる?すごく難しいんだと思うけど、どう?

曽利:アルフォンスがフルCGというのは言わないつもりだった。宣伝でバーンと出ちゃった。
アルフォンスに感情、人格を感じてもらえれば、ハリウッドに並ぶと思う。
CGキャラと人間が絡む、喧嘩する、ハリウッドはクォリティとか色々あるから無理に踏み込まない。我々はチャレンジャーだから他がやらないことをやる。ハリウッドも驚くと思う。

前田:山田君のエドとアルフォンスが喧嘩したり、翼ちゃんと一緒にいる、地味に見えるけどすごい。

曽利:食事の場面といった日常に居ると、実体としての認識を深める。
人格を深める、CGのアルフォンスが観客の中で実体化すれば、新しい扉が開く。日本映画がもっと広がるとワクワクを感じる。

前田:VFXの技術、人間とCGの絡みは画期的、このノウハウでこれから何ができる?

曽利:VFXのライティング技術は急送に進歩している。光のバーチャル化で存在が感じられる、ここにアルフォンスが立つ。会場にはCGの勉強をしている人もいると思う。個人でもかなりのことができるがプロはもっと深い。この技術には究極の到達点があって、それはここにあるすべての光を再現すること。ハリウッドではできている。同じことをやれば追いつくということ。
日本とハリウッドではマーケットの大きさが全然違う。予算もすごい、背景も、ハリウッドのセットのすごさは日本で作ると予算ぜんぶ使ってしまう。
マーケットを広げればバジェットも上げられる。
CGでバジェットを下げればマーケットの可能性が広がる。面白い時代になる。この映画がそのきっかけになれば。

前田:ハリウッドで映画化すれば、とかいうけど、持っていかれると悔しい。でもチープなら作るなと。猿の惑星は予算170億というが、観客は同じ料金を払っているから、同じものを求める。日本製だから仕方ない、というのは。

曽利:アップルシードはフルCGだったが、今は実写でできる。可能性が広がる。若い人は夢を持って。

前田:漫画の舞台が日本じゃないから日本で作るのは無理と考えるのは違う、というのは分かる。

曽利:イタリアでロケしたが、イタリアにもハガレンファンはとても多い。日本人キャストについて海外の方が理解がある。日本のコンテンツだから日本人でやるのを望んでいると私は感じた。
自信を持てると作れる。若い人に続いてほしい。
原作の荒川先生と直接日本語で話して作れるのも強い。ハリウッドで作るとそれは難しいと。

■アルフォンスの声
前田:何でアルの声はくぎみーじゃないの?(会場笑い)

曽利:よーく分かる(会場笑い)その気持ちはよく分かるが、釘宮さんがアルフォンスをやると、何でエドは朴さんじゃないの?となる。釘宮さんと山田君の組み合わせは辛い。

前田:コンビのバランスは大事

曽利:アニメの実写化ではなく、原作からアニメがあり、原作から実写がある。勇気をもってキャラもデザインもリニューアルした。
慣れるまで時間がかかるが、そこから新しく始まる。
アルフォンスの声は最初は決まっておらず、その後大人の事情からキャストが上がってきた。素晴らしい演技の方で自分もその人になるんだろうと思っていた。しかしアルのスタンドインの水石君の、山田君のエドとの喧嘩のシーンが良くて、大人の事情を説得して水石君にした。
水石君は勉強になると言って出番が無くてもずっと現場に来ていた。それで決めたわけではないが、スタッフは皆その熱意を知っていたので、決まったとき山田君も本田さんもとても喜んでくれた。


■質疑応答
Q:曽利監督のファンでピンポンから観ている。しかし今回は、海外キャストを使わないのは、進撃の巨人の失敗が生かされていないのではないか?朝日読売電通博報堂、その上に講談社と最強の製作委員会で、あれ。
曽利:(苦笑ののち、真面目な顔になり)映画は監督の思う通りに撮り切るのは難しい。制作サイドがイメージしたことができないこともある。今回は海外キャスティングを考えていない。文化・言葉の壁。いずれインターナショナルスタッフで作ろうという時代も来ると思うが、まだその時ではないと思う。

Q:まぼろしのアルの声は誰?
曽利:(笑い)大人の事情で言えない。
前田:水石君の声は良かった。正解だったと思う。

Q:音楽で意識したことは?
曽利:オーソドックスを心掛けた。攻め込まない。100年前のヨーロッパが舞台だと意識して、どっしり、チャラチャラしていない、耳に残るものを。

Q:海外のリアクションは?
曽利:来月中旬にニューヨークで上映会があるので、それから。

Q:美術のこだわり
曽利:衣装は舞台美術、舞台NARUTOの衣装とか作っているデザイナーの西原さんに。衣装はクローズアップに耐えられる生地、デザインにした。西原さんが朴さんの親友というのは後から知った。
髪型も、エンヴィーの髪も一度原作通りに特殊メイクでやってみたが、これはムリだなと。人に見えない、コスプレになっちゃう。それは止めて、人ができる人の髪型、本郷君の芝居を邪魔しないものにした。

Q:監督の好きな実写化は
曽利:どれが、とかはすぐには出てこないが、アベンジャーズとか観ている。

Q:演出について。予告のエドの走り。
曽利:山田君の中にもエドの走り方はこうだよね、というのがあって、相談して作っていった。普通に走ると面白くない、ちょっとマンガチックに行こうかと。普通に走っているシーンもある。シリアスなシーンは真剣に走っている。

Q:見どころポイントは
曽利:ヴィジュアルエフェクツは日本で一番多いかもしれないけれど、ヴィジュアルエフェクツの映画ではない。兄弟の物語、人がテーマの映画。
見どころは、兄弟喧嘩のシーンとか。セリフではない表現が好き。人が演じる、体が表現すること。

Q:海外は吹き替えか?
曽利:早く上映するところは字幕。時間をかけるところは吹き替えかもしれない。

 

■最後に
曽利:新しい技術、新しい日本映画を広げていきたい。失敗もある。勇気をもっていくつも作って前に進んでいく。若い方も頑張ってほしい。私もこの映画の後も取り組む。でもまずは鋼の錬金術師を映画館で観てください。
(会場拍手)

 

感想
監督は理知的で明確な語り口の方でした。
まずファン向けトーク、続いて若手クリエイター、特にVFXを学ぶ人向けトークという構成や、辛口で知られる前田氏がファン心理を代弁しそれに監督が答えていく、という構成も良く考えられてるな~と。

アルをちゃんと、アルフォンスって呼んでたのも好感。
観客からの質問も幅広く質もおおむね良く、進行のアナウンサーさんもハガレンファンを滲ませて楽しませ、気持ちいいトークショーでした!

 

私は最初から実写映画歓迎派。
ぎゃーー!とか言ったけど!これからも言うと思うけど!(笑)
でもね、もし映画が酷くても、「これは私向きではなかった」と考えればいいから。私が嫌でも、誰かが嬉しければそれでいい。
例えば山田君ファンは今すごく幸せだと思うし誇らしいと思う。私も、すごいね190カ国だよ、良かったね!って心から思う。
山田君も翼ちゃんも可愛いし、たとえコスプレショーだって、あのおディーン様や松雪さまがハガレンのコスプレをしてくれるんだよ!?それだけで感謝だよ!ありがとう!!

 

あとね。
プロデューサーは嘘つきだけど(黒須さんとか森尻さんとかね!)、汗をかいてモノを作っている人は嘘をつかない。(大人の配慮はするけどねw)

曽利さんは「私が希望して私が作った」と、最初から言って矢面に立っている。そういう人、私けっこう好きなんだよな~。

 

こないだ、「偉大な作品には誤読の余地がある」というような言葉を読んで(うろ覚え~)これはハガレンのことだ!と思ったことがあって。

すべての読み手に「私のハガレン」があり、それはどれも「間違っている」。
だから、例え原作漫画であっても「これは私のハガレンではない」と思うことが許されるし、同じように、こんなのハガレンじゃないじゃん!と思っても、それはそれとして存在していて良いの。

なんかこー、うまく言えないんだけど、みんな良いんだよ!(台無しw)

 

それでね。作品観ると、その人がハガレンの何に惹かれたかよく分かるじゃない?(例えば原画展はむっちゃホム好きが企画した!って分かるw)

なので、私は、今度は曽利文彦という人のハガレンが観れる!というのが、すごい楽しみ!

 

今日のトークショー、ほんと楽しかった。

ありがとうございました!