原画展!
原画だからこそ気付くこと。
シャプールの最期の場面。
流れる血を筆で思うままに描いていて、迫力あるなあ!修正無いよ一発描きだすごいなあ、と思っていましたら。
違ってた。
修正は無い。でも一発描きでも無かった。
最初の印象は左ページを見たとき。
でも、改めて見た右ページのベタは、インクのフチドリがあって、ベタ塗りつぶしの印、×印がついてた。
つまり、こちらはアシさんの塗り。
こちらは先生の塗りなんです。
見開きで見ても、その迫力に差は無い。
でもね。流れる血を、イメージのままに筆を走らせるのと、アシさんが間違わないようにフチドリ描いて渡すのと、作業としてはぜんぜん違うよね?(私は絵を描かないので知らないので、想像なのだけれども)
荒川弘先生はプロだ。
と、改めて思いました。
もうひとつ気付いたのは、1話のアルスラーン顔見せのページ。
上のコマ、下のコマと同じに、右側に枠線引いてたの。
それをホワイトで修正して、ヴァフリーズの後頭部まで描いている。
原画展ではネームと並べて展示してあるページだからわかる。ネームは上下とも枠線で囲まれている。
大きな修正は滅多に無いから、これはきっと、後から気付いて修正したんだ。左右見開きのバランスかな?前のページからのつなぎかな?
そういえば、鋼の初期に、荒川弘は「枠線の外まで使わない少年漫画家」として評価されてた。
マンガ夜話か何かで、少年漫画はワーっと盛り上がってページいっぱいに描く作家が多い。枠があるということは、この作者はとても冷静だという感じがする。
と評価されてた。
鋼と銀匙とアル戦の、コミックスの切り口を見てみて?
鋼より銀匙のほうが白っぽく、アル戦は鋼と同じくらい黒がぽつぽつ入ってる。
つまり、鋼より銀匙のほうが枠内で収まっているページが多い。
そしてアル戦は鋼と同じくらい裁ち切りまで使っている。
この鋼は1巻と27巻。銀匙は1巻と11巻。アル戦は銀匙と同時平行で描いている。
時間の経過で書き方が変わったのではなく、作品の性質によって、書き方を変えている。
こんな所からも、そんなことが分かるのです。
コマの使いかた、ページレイアウトの広がりとまとまり。
荒川先生は冷静に自在に調整してて、だからあんなに読みやすいんだなあ、と。
それから、カラー絵。
連載開始の扉絵、青年と少年のアルスラーンが背中合わせになってる絵。
白いマントに、しゅーっと切れ目が走ってた。
切り張りしたのかな?
そう思ってよく見ると、切れ目は紙のフチの手前で途切れている。
切ってない?
じゃあ、何のスジだろう?
よく見ると、他にもスジがあった。
マントの端。
輪郭線の、延長のようにキズがある。
インクが切れてペン先が紙を削った?
いや違う。これは下書きだ。
そうだ!これは鉄筆の線だ!
荒川弘先生のイラスト描くところは、時々写真が公開されてるけど、鉄筆を使ってたのを見た覚えは無い。
でも、たぶんこれは鉄筆。
鉄筆のスジまで色を塗り、その上から濃い色で線を乗せてる…んだと、思う。
もしこれから原画展に行く絵師さんがいらしたら、どうか確かめてほしいです。
あれはやっぱり鉄筆なのか。
他の絵だと、スジが分かるのと分からないのがありました。
連載開始告知広告の、大人アルスラーンの正面絵も、鉄筆の線がはっきりわかる。
逆に、1巻表紙の絵は、主線がとても淡いのに、分からなかった。照明の位置のせいかもしれないけれど。
でもあんな薄い色合いで、下書きどうやってるんだろう?
私、荒川先生のカラーって、真面目に描くと固くなりがちかも?って思ってたんだけど。
そしてアル戦も最初の頃のカラーも、どこか固いなあと思ってたんだけど。
もしも本当に鉄筆で、そしてあんなに深々と線が残るほど力が入ってるなら。
固いわけだよなあ、とか。
荒川先生でさえも、新しい連載は自然に力が入っちゃうのかなあ、とか。
いろいろ考えて、面白かったです。
考えてる間もまた、すごく幸せー。
何度見ても発見がある。
すごいなあ。原画って。
ありがたいなあ!生原画が見れるのって!!