別マガ アルスラーン戦記 感想!
いきなりですが!
今月の一コマは、これ!!
これぞ、イケメン!
そう、誰もが思っていた。
稀代のストーリーテラー荒川弘が、あえて原作つき漫画を描く理由とは、何か。
今ここに、その答えが示されました。
それは。
美形を描くためです!(どどーん!)
だってさ!
荒川弘オリジナルだったら、先生ぜったい照れちゃって、こんな表情つけらんないもん!
これは田中先生のキャラだから。自分の子じゃないから、こんな風に描けるのよ!
やーもー。
今月はギーヴ大活躍の回でした!
さて、その前に、まずは「これまでのあらすじ」です。
このページがさ、ほんと愛情もって楽しげに作られてて、毎号楽しみなのよ!
だって、キャラ紹介がこれよ?
ギーヴ : 女の子大好き楽師。
エラム : 料理上手の侍童。
ファランギース : 才色兼備の女神官。
ダリューン : 最強の戦士。超強い。
ナルサス : 天才軍師。芸術ラブ。
的確すぎる!(笑)
ダリューンが強いって二度も言ってるし!
そうそう、ナルサスは3巻帯でも遊ばれてるよね。
帯のうしろのキャラ紹介、知ってる?
他のキャラは真面目に「大国パルスの14歳の王子うんぬん」とか書かれてるのに、ナルサスだけ
「神算鬼謀の軍師。しかし、芸術は永遠、興亡は一瞬!とわけのわからないことを言い、(略)」
わけのわからないこと、って!(爆笑)
さて、今月号はほんと、密度が高くて、キャラとキャラの関係性がとても良く描かれていて、とっても読み応えありました!
以降、雑誌ネタバレでーす!(原作バレは無いでーす!)
単行本で楽しみたい方はここまでに。
でも9月までなんて待てない!とか、その頃にはだいたい忘れてるから問題無いわ、という方はこのままどうぞ!
私ね、こういう所がすごい好きなの。
女たらしのギーヴと、それを冷ややかに見るファランギースと素直に興味を示すエラム。
中立のナルサス。
みんなの視線がアルスラーンへ。
これが、同じページの、一番上と一番下にある。
ね?もう、うまいっしょ?!
ダリューンの表情とかさ!おまえゴルゴかよ!(笑)
それから、原作既読組には、おっ?!という場面も。
原作では(特に序盤は)、エラムはナルサスの指示にのみ従うイメージ。ナルサスの侍従なんだから、それは当然。
でも、少年漫画・荒川版アル戦では、エラムはチーム・アルスラーンの一員。
だから自分の判断でアルスラーンに弓を貸すし、こうしてダリューンの指示も受ける。
またダリューンは、元万騎長の身分でありながら、解放奴隷の子どもにその肩を貸す。
人と人との関係が、田中原作の一途さと荒川漫画の対等性とで、少しだけ色合いが違ってる。
そこがすっごく面白い!
2巻もでさ。洞窟の隠れ家で、ナルサスがアルスラーンへ滔々と王の道を説いてるときに、ダリューンとエラムが視線を合わせて苦笑してるでしょ?
あそこもね、大好き。
あんなに拒んでたくせに王子に遣えるとなったらいきなりこれか、とか、ナルサス様らしいですよね、とか、本当は山奥で腐っているような人物じゃないからな、とか、そういう、ナルサスへの気持ちを二人は共有している。
二人ともナルサスが好きなんだなあって。
もちろん、エラムとナルサスの関係性もしっかり表現されてます!
「ナルサスに依頼されて、(中略)動静を探っていたのである。くれぐれも危険なまねをせぬように、と、ナルサスはしつこく念をおし、そのあたりの矛盾がエラムにはおかしい」
「エラムが、敬愛する主人に、気づかわしげな目を向けている」
かぎ括弧で引用した原作は、どちらも今月号とは別の場面です。
でもこうして、ナルサスはエラムを便利に使っているだけではないし、エラムはナルサスに庇護されるだけではない、というのを、荒川版でも機会があるたびに描いてくれる。
さらに今月号は、お馴染みギーヴとファランギースの漫才の、荒川バージョンもあります。(美しいおみ足!)
この場面がね、素晴らしいの。
だから絵の引用はしません。
私が3巻で一番心に残ったのは、アルスラーンが小川のほとりで、エトワールの本を受け取る場面。
その本がフチまでボロボロなのは、きっとエトワールが子どもの頃から大切にしていたから。
ナルサスは言う。「蛮人は、他人にも大切なものがあるということを理解しないのです」
その言葉をアルスラーンは、侵略者の教典、エトワールの大切な本を懐にして聞く。
教典を「エトワールの大切な本」だと思ったのは、私。
3巻では、「大切な」と言ってはいなかった。
アルスラーンが懐の本に視線を落としたのも、イアルダボート神の前では人は平等というのは建前だ、とナルサスに言われた後に。大切な、の文脈ではなく、奴隷制の話の流れで。
でも、今月号であの本は「他人の大切なもの」の象徴だと、はっきりと示してくれた。
あっ、合ってた。
私、ちゃんと荒川弘先生のメッセージを読み取れてた。
もうね、100%自己満足なんです。
私以外にもあのシーンを印象的だと言ってた方はたくさんいる。
でもね。
私は、荒川先生のメッセージの上をまっすぐに歩けてた。それが、私には、なんていうか、ジーンとくるような喜びがあって。
すごい、うれしかったです。
ナルサスの台詞は「蛮人は・・・理解しないのです」
それを、アルスラーンは肯定形に言い直す。
「他人にも大切なものがある」
ナルサスの台詞の強さは消え、なんだかすごくフツーの文。
でも、この素直さがとてもアルスラーンらしい。
そして、この肯定形の単純さは、少年漫画の明るさだ。
この台詞は、フキダシの中に、カギ括弧付きで書かれている。
荒川先生は無用な装飾をしない方なので、これはすごく珍しい。最大級の強調だと思う。
さらに発言者たるアルスラーンの顔を描かない。
彼の視線の先、エトワールの本を、読者はアルスラーンとともに見つめる。
アルスラーンは他人の「大切なもの」を見抜き、それを汲むことができる。
ナルサスの大切なものが絵画、芸術を愛する心であることを見抜いたからこそ、宮廷画家の地位を申し出た。
エラムの大切なものが料理、それもナルサスのために作る料理であることを理解していたから「我らの中でこんなに美味な」の台詞が出てくる。
何万人もの兵を殺し王都を占領した敵国の宗教の教典。
けれど、同い年の子の大切な本。
私は今月号を読み終えて、鋼のエドの「民族っていう括りだとどうしても衝突しがちだけど一人一人なら対等に話し合えると思うよ」や、銀匙のアキの「わかろうとする努力はやめたくないよ」を思い出しました。
いつか、アルスラーンもまた、カギ括弧付きではない彼自身の言葉で、こういう台詞を言う時が来るんだろうな、そんな風に思います。
それはたとえ原作そのままの文言であっても、少年漫画の主人公としての体験や感情に裏打ちされた、生きた言葉で。
お話は終始、明るくテンポ良く。
この重要なモチーフを語る相手が、ダリューンでもナルサスでもなく、ギーヴとは!という新鮮な驚き。
エピソードの締めのギャグには笑っちゃうし、そこから本筋へ戻る流れもうまい。
その上、女にうつつをぬかしてはならん→窓の外へ、を、ファランギースの窓辺で自ら再現してるし!
ナルサスの不適な笑みもステキだし、ダリューンがアルスラーンと引き離されると眉間に皺で迎えるコマは笑顔で分かりやすいし、エラムは素直に感情を表しててカワイイし、ファランギースのお姿も部屋の調度品も美しいし、何よりギーヴがすごい美味しいポジションで、ほんと今月は良かった!
そしてアルスラーンがどのコマもすんごいかわいい~!
はー、おもしろかった!
来月号もすっごい楽しみですー!!