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寝言は寝てから

荒川弘ファンのてきとうなおしゃべり。

ゆうきまさみ 異端のまま王道を往く (文藝別冊/KAWADE夢ムック)を読みました!

もちろん一番のお目当ては、

羽海野チカ×荒川弘×ゆうきまさみの鼎談!

でも、それ以外の記事もほんとに面白かった。

ゆうき先生の、ののほんとしてるとこ、物事も自分もフラットに等距離にとらえる視線とか、そういうのが全編にわたって感じられて、すごく読みやすかったです。

ゆるっとあったかいんだけど、クールなんだよねえ~(笑)

なつかしのネタも面白かったし、パトレイバーは構想を練った仲間内の一人がゆうき先生で、アニメを応援するためにマンガ描き始めたというのを私は寡聞にして知らず、そういうところも興味深かった。

メディアミックスと作家性というのは、マンガにおいて手塚治虫のときから課題なんだと思うんだけども、パロディ、つまり作家性が後からついてくるという形から漫画家となったゆうき先生のスタンスは、そういうのをするりと超えてらして、なんていうか、スゲエなあ!と。

あと、昔の絵が丸っこくて今の絵はシュッとしてて、そういうのも意識して描いてらして、なるほどなと。

斜め顔のデッサンとか今の絵のがずっと「ちゃんとしてる」んだけど、それは絵の上達ではなく、今時の画風に合わせていった結果、なんだなーと。

マンガの絵は正しいから上手いのではなく、読者に伝わる絵が上手い絵。

そして読者に手にとって見てもらうには今時の絵柄に沿わせて進化してかなきゃならない。

そんなことを色々と感じつつ、なつかしのネタに爆笑したり。

編集は南信長さん。こんなに雑多な内容をまとめるの、さすがだわ~!

そして鼎談です!

いやー、面白かった!

B5版に3段組み24ページとボリュームたっぷり。

一番の感想は。

羽海野さんってカワイイ!(笑)

オイお前荒川弘のファンだろうがよ。

うん。

あと、ハチクロは、私の感性が雑すぎるので登場人物の感情のゆらぎを自分の中のものとして再現できず、最終巻を泣きながら読んだくせに全体の感想は「私じゃない人が読んだらもっと感動できたんだろうな…」でした。ごめんなさい!私は恋愛映画はどこが面白いのか分からないので見ない人種です。

でも、端々で目にする羽海野さんの言動(スタッフへの差し入れでダンボールの隅々までぎゅうぎゅうにお菓子詰めるとか)がとっても可愛いくて、脆さと強さを併せ持ったはぐちゃんはまるっと羽海野先生のイメージ。

で、鼎談で何がかわいいって、いっぱいしゃべってるのがカワイイw

数えちゃいましたよ発言の回数。

ゆうき: 95回(30.1%)

荒川 : 90回(28.8%)

羽海野:128回(40.1%)

うひゃひゃひゃ!やっぱしゃべりまくってる!

あれが好き、これも好き、こういうとこがすごくって!ってほっぺ赤くしながらおしゃべりしてる感じが想像できちゃうw

一番面白いのが78ページ。

でぃす×こみ」冒頭の作中BL、スイカ食べてる二人の絵が載ってるページ。

ここを羽海野先生が、男の人がこんなにふわっとしたBLを描けるなんてすばらしい!しかも私の大好きなシチュエーション!私にとってのBLは全く何も起きない触れもしないものなんで、こういうのをずっと読んでいたい!って語ってて、その間のゆうき先生の発言は「やあ、それはよかった」「もちろん」「そうだったんだ(笑)」など、完全な相槌w

もちろん自分の作品をまっすぐ受け止めてくれる読者(ここの羽海野先生はまったく一読者(笑))からの賛辞は嬉しいでしょうけども、やっぱ照れくさいんでしょうね(笑)

なお、当然に、ここには荒川先生のコメントは一言も出てきません(笑)

荒川先生、「男の子が並んでスイカ食べてセミの声がしておしまい」の、どこが「いい匂いがする」のか、ぜんぜん分からないんだろうなあ(笑)

ゆうき先生と荒川先生は少年漫画で、羽海野先生は少女漫画。

この対比がとても面白い。

パトレイバーの話から入るんだけど、

羽海野「後藤さん以上に好きな人がなかなかできなくて。こんな大人な男の人がいたらいいなって思って」

荒川「私も後藤さん大好きです。むしろ『後藤さんみたいな大人になりたい』と思っていました」

羽海野「私は南雲さんみたいになりたくて」

パトレイバーをご存じない方に説明しますと、後藤さんは割れ顎のおっさんで普段はチャランポランでも決めるときは決める隊長。

南雲さんは長い髪を後ろに結んだいつも制服できりりとしている大人な女性の副隊長です。

ああ、なるほど(笑)って感じですよね!

で、お二人とも、大人になったのに、あんな風になれてない!と嘆いておられました(笑)

血の気が多すぎてとにかくうるさいキャラ、太田についても。

羽海野「私、実は太田さんがとても苦手で。『なぜそこでそうしちゃうの太田さーん!?』ってなってたんですよ」

荒川「私は、なんか好きです、太田。一芸に秀でたバカが好きなんで(笑)」

ははは。この違い、わかるわかる。

で、この後、ウザいくらいのキャラがいると物語を打破してくれる、というゆうきさんの説明に。

ああ、銀の匙だと八軒の兄貴とか大川先輩ね、わかるわかる(笑)

荒川先生が語るのはレイバー。

ゆうきまさみ30年記念のときも、荒川先生はキャラじゃなくてレイバーのアルフォンスを描いてましたもんねw

荒川「私、レイバーだとブロッケンが好きなんですよ。ブロッケンかっけー!みたいな。免許あれば乗れそうな感じが、またいいんです」「大特(大型特殊免許)じゃ乗れないのかな」

ゆうき「ブロッケンかっこいいっていうのは、なかなか珍しいですよ」

荒川「あとハヌーンもいいですね」

羽海野「メカお好きなんですか」

荒川「乗れそうなところ、手が届く感じがいいなあ、と。エヴァとかガンダムは乗りたくないけど、レイバーは乗りたい」

ああ、わかるわかるw

それから羽海野先生と荒川先生で、ゆうき作品のリアルな生活観がいいよね、という話になって。

雨の日にカバーを外す描写が、雨の匂いやカバーが濡れて張り付いてしまうところまで想像できるとか、これから台風が来るというときにコンビニに買出しするとか。

羽海野「よけいに事件が大ごとに思えて。普通におにぎり食べる人たちが、こういう状況に置かれているんだ、という」

ゆうき「事件は大ごとなんだっていうふうに描きたかったんですよ。もともと日常をちゃんと作っていこうというのは、アニメのときからのコンセプトではあったんで」

荒川「ゆうき先生のマンガは、やっぱり全体的に生活臭が心地よいという。現実と地続きで、物語にスッと入っていける感じ」

それから連載とキャラクター作りの話。

羽海野「連載って万全に準備できないシーンがいっぱいあるから、なんかもう、エイヤーってやるしかないですもんね

ゆうき「パトレイバーなんかでも、こういう見せ場来るだろうと思って描き始めて、そういう見せ場にたどり着いたことは一度もないですから」

そうなんだ?!

羽海野「それちょっとわかります」

わかるんだ・・・

荒川「キャラクターが変に育っちゃうことで話が変わることもありますよね。脇キャラが育ってきて、そいつが主張してきて…」

ゆうき「内海なんかもそうなんだよ」

荒川「めっちゃ最初から出てるじゃないですか」

ゆうき「うん。でも、そんなに重要なつもりじゃなかったんだけど、育っていって結果オーライみたいな」

荒川「世の中のマンガの9割くらいは結果オーライですよ(笑)」

そうなんだ?!(笑)

作画の話。

バーディで、アングルが難しくて下書きだけで3時間(!)かかったコマがあるという話から。

ゆうき「その回は、アクション全部、女の人を抱いたままやってるんですよ」

荒川「そういう作画でギャーッてなるときって、『このネームを切ったのは誰だ!』『ここに呼んでこい!』ってなるんですか、海原雄山みたいに(笑)」

ゆうき「いや、むしろ『どうしてこんなネーム切っちゃったかなー』って」

ここ、荒川先生とゆうき先生の個性が出てて面白い! 怒る荒川、ぼやくゆうき(笑)

それから、読者に伝わるベストアングルはこうなのに、描けない、デッサンが取れないというときどうするか、という話で、三人ともがそれでも描く、それは自分との闘いだ、という話があって、ジンと来ました。

荒川「『今回はいいや』って楽なほうに流れちゃうと、また同じことをやって」「ここで押さえなきゃサボりたい病を抑えなきゃダメだ、と」

羽海野「誰が知らなくても、私が覚えてる。それが嫌みたいな」「自分を信じるのって、逃げなかった回数の記憶なので」

それから「正しいかより面白いかどうか」という話に。

荒川「まあ、私は農家やってたけど、ウソ描きますからね、普通に。こっちのほうが絵的に面白いとかで」

わははは!

でもね。知ってることだから、嘘が描けるんだと思うんだ。

そして知らないことはできるだけ正しく、絶対に正しくはできなくても、できる範囲で正しく描こうとしてらっしゃると思う。ライオンの将棋や銀匙の馬術について。

それは正しいことが良いことだからではなく、将棋や馬術をやっている読者への誠実さだと思う。

結局は、マンガは、読者に向けて描かれているんだなあ、と思いました。

それから。

荒川先生の発言で一番行数が多かったのは、福島のことでした。

17行。対談の中で一番多いんじゃないかな?それは聞き手のお二人が黙って頷いていたからかもしれないし、編集さんがここに相槌を入れる必要性を感じなかったからかもしれない。

荒川「福島とかあの辺、津波とか放射能とかで、農業関係がメタメタになって、結構叩かれたりもしたんで。ウチは北海道だけど、やっぱり同じ農家としては心配になるんです。マンガの中には出てこないんですけども、こいつら(『銀の匙』の登場人物たち)福島のこととか気にしながら日々やってるんだろうなとか。農家のおっちゃんたちも気にしながらやってるんだろうなとか。考えながら描いてはいました。セリフには反映してないですけど、安心と安全の違いみたいな話では、つながるところはありますね。数値的には全然問題ないんだけど、それでもいらないって言われちゃったじゃないですか、福島の食べ物とか。これ以上何をしたらいいの、みたいな」

荒川先生は震災のときお子さんが3歳で自身も妊娠中でした。輪番停電の真っ暗な夜、品薄で空っぽのスーパーの棚、放射能への言い知れぬ不安、関東・東北に住む人たちが経験したことを、荒川先生も同じく経験して、その中で銀の匙の連載を始めた。

この、健やかで優しくて馬鹿馬鹿しくて面白い物語が、2011年の世界として描かれている、ということは、静かで大きな意味を持つ、と私は思います。

作中で震災に触れられたのはただ一度。文化祭の日、八軒が眼鏡を直しに行った店の、レジの横の募金箱。

ここだけ。

「ヒーローズカムバック」への寄稿や、チャリティーへの色紙の出品、銀匙カラー絵でチャグチャグ馬コや相馬野馬追をモチーフにすることで、言葉にしない形で、東北支援の姿勢を示してきた荒川先生。

銀匙の作品世界と震災とがリンクしていることを先生が語られたのは、私が知る限りではこれが初めてです。

そうか、やっぱりそうなんだ、とか、先生が語られたのは作品世界が2014年になってることと関係あるのかな、とか、色々なことを思いました。うまく言葉にできないやw

鼎談は、他にも色々な話題があって、楽しいったら!

昔読んでたマンガの話とか、子どもの頃に見てきたことがマンガに影響するって話から、羽海野先生のお父さんはカバン職人だったから作品にも職人が出てきちゃう、とか、ゆうき先生は会社員だったからサラリーマンの日常にリアリティがあるだとか。

群像劇でわちゃっとキャラが出てくる話、キャラの書き分けについて、そこから、白暮のクロニクルの伏木さんがデカくてヌボーっとした女の子で主人公でああいうの初めて見た、と羽海野先生が語れば、外見が十人並みでも可愛げがある子を描きたいとゆうき先生が応じ、それはファンが食いつく、と荒川先生が同意するとか。

もういっぱい楽しい話があって、ほんと、興味がある方はぜひ読んでみてください。

お金が無い学生さんは図書館にリクエストもひとつの手。司書さんの中にはきっとゆうきまさみファンがいるはず!(笑)

あー楽しかった!

ゆうき先生、このメンバーで鼎談を組んでくださって、どうもありがとうございました!