荒川弘先生、ダ・ヴィンチ「BOOK OF THE YEAR 2015」好きな漫画家ランキング第3位おめでとうございます!
荒川弘先生、ダ・ヴィンチ「BOOK OF THE YEAR 2015」、
コミック部門第5位「銀の匙SilverSpoon」、
第16位「アルスラーン戦記」、
そして好きな漫画家ランキング第3位、おめでとうございます!!!
ダ・ヴィンチの「BOOK OF THE YEAR」2015年の1位は「3月のライオン」に - コミックナタリー
よかった!嬉しいなあ。
ダ・ヴィンチのアンケートは、参加したことある方はご存知のとおり、気が向いたときだけ好きな作品に投票し、知らないジャンルはパスできて、アンケート母数の人数・性別・年齢構成も非公開という、ただの人気投票です。
でも、広く浅く本の話題を扱ってくれる。コンビニに置かれる唯一の本の雑誌。このコンビニに置かれるってのがすごいよね。膨大に出版される雑誌の中で上位何パーセントかのメジャー位置にいるってことじゃない?
あと、ようやく!ようやく!「好きな漫画家」の、性別分けがなくなりました。
荒川弘先生が鋼でブレイクしたとき、「男性漫画家」と「女性漫画家」に票が分かれてオイオイってなったのからはや12年。性別で区分けするなんて、何の意味も無かったもの。あーよかった!!
荒川弘先生、安定の人気でほんと良かったです~。
特に銀の匙が5位は、たくさん待ってる方がいるんだなあ、と。
来年の掲載が楽しみ!!!
そうそう、推し作家さんや推し作品があるときはアンケ書くといいですよ!得票数50でもランクインする裾野の広さですしコメントもけっこう高確率で採用されます。私みたいに月に1冊も活字の本を読んでない、そんな人でもアンケ回答できますから!(笑)
そんなふうに、本の情報は好きなのに本を読むのは面倒くさい、という私ですが、最近、久々に長い活字も楽しいバイオリズムになりました。おお、数年に1度のウェーブがきたぞ、1ヶ月に3冊も活字の本読む私ってすごくない?!とか喜んでます(笑)
なのでここからは私の個人的に面白かった本のご紹介。
いや、あなたの個人的な話は別に興味ないよ、という方はここまででOK。ありがとうございました!
次回は別マガ感想か、その前にアニメガイドのラフ画の感想です♪今頃って感じなんだけど、語りたいネタがあるのよ~!
あなたの個人的な話は興味ないけど本の話題は嫌いじゃないよ、という方はこの下もどうぞ~v
「芸術とは何か」千住博
鋼の錬金術師FAのBGMを作曲した千住明のお兄さんが書いた本、という軽~い理由で手に取りました(笑)
美術館なんて数えるほどしか行かないし、この方の作品を見たことも無い(あるかもしれないけど覚えてない)私ですが、この本はおもしろかった!
なんと言っても明快。
正しいプライド、ほんのりユーモア、日本画壇とオークション業界への辛辣、広々とした人間愛。
図書館で借りたんだけど、なんか手元に置きたくて書店で買いなおしました。
絵は綺麗だけどスカスカな漫画より、下手でもぐっと来る漫画のが面白いんだよね~とか。
幼児の絵は楽しいのに、小学生の小賢しい絵はちっとも心ひかれないこととか。
よしながふみさんの余白ってスゲエ、とか。
そういう、今までぼんやり感じていたことが、明快な言語になって「回答」されてるから、すっごいためになる!って感じ。
Q&A方式で書かれてるんだけど、例えば問い70「芸術家とは才能ですか、技術ですか?」
千住さんの答え「芸術家とは、技術なのです」
前提として、イマジネーションとか感情の動きは人間誰もが持っていて、それを他人に伝えるツールが芸術(絵画でも音楽でも何でも)なのだ、という話があるのね。
で、そのイマジネーションを何とかして伝えようとする人たちが「芸術家」だから、芸術家は技術。
これ、ツィッターで人気の小池一夫さんの言ってた「スランプの時は、技術という力業で乗り切るのだ。そのうち、心が復活してくる。それまで持ちこたえる技術を身に付けるのがプロフェッショナル」ってのと、たぶん同じこと言ってると思う。
問い61「写真を見て描くことは邪道ですか」とか、問い67「盗作と引用、模倣とアレンジはどう違いますか、どこまで許容されますか」なんかも、まさに漫画好きがしょっちゅう話題にしてること。
もちろん、「芸術」はラスコーの壁画以降すべての歴史上の絵画の中に自らの作品を置いてて、漫画とかアニメとかアイドルとかの「商品」は今のほかの作品との比較の中にあるから、違うところもあるけども、でもなんつーか、同じこと言ってることがいっぱいあって、ああ!うん!と納得してばかり。
なお、引用・模倣はどこまで許されるか、に対する回答の締めはこうでした。
「音楽や文学、映画だとわかりやすいですが、プロセスこそが作品の内実です。絵画とて同じです。オペラも最終章のフィナーレだけ見ても聴いても、人は感動しません。そこにいたる色々を味わうことがあって、はじめてのクライマックスです」
なんつーかねー。
ひたすら腑に落ちるっていうか、本を閉じたあとのが色々あてはまるとこ発見して。
面白かったです。
「魔女の1ダース」米原万里
どんなエッセイも抜群に面白かった米原さん。ロシア語通訳で各国の文化やジョークwに詳しく、軽妙な毒舌で、鋭さの根底に「面白がり」なところがあって温かみがある。
古い本だけど今読んでもぜんぜん変わってないから(世界も日本も!)すごく面白かった。
その中に、ちょっと真面目っぽい「人間が残酷になるとき」という章があって。
「人類は愛せても隣人はなかなか」
セルビア語とクロアチア語は大阪弁と京都弁ほどの違いしかなかったが、国策とジャーナリズムによって人工的に別の言葉になっていった。民族を規定する言語や固有の文化なるものがいかにあやふやで操作可能か。
「愛国主義はゴロツキの最後の隠れ屋」
生まれ育った国を愛するというのは極めて自然な感情だから、それをわざわざ大声で主張したり煽ったりするのは、お手軽でいかさまな行為では。国、民族、宗教、イデオロギーの、人と人との間に障壁を作り出す力は途轍もなく大きい。
というエピソードを積み重ねたあとに。
「どんな遠い異国の人々でも、物理的には近くにいるのに得体の知れない他人でも、身近でかけがえのない人々にしてくれる魔法のような装置はないものか」
と前置きし、次の話を紹介する。
18世紀、青年貴族と農奴の娘の悲恋小説が読者の心をとらえた。支配階級に属した当時の読者層にとって「百姓娘でも恋ができる」というメッセージは驚きだった。その後のロマン主義、自然主義の流れにより「農奴とて同じ血の流れる人間である」という認識はジワジワと広がり、農奴解放令につながったといわれている。
アメリカでも小説「アンクルトムの小屋」が「黒人もわれわれと少しも違わない人間である」という当たり前の認識を白人たちの間に広めるのに寄与し、後の奴隷制度廃止を促進させた、とほとんどの歴史辞典に記されているそう。
そうして著者はチェチェンを舞台にした小説を思い出し「フィクションだと分かっているはずなのに、主人公の少年たちのその後が気に掛かって仕方ない」と語る。
この、世界の様々なものを見てきた方が、「物語」を「どんな遠い異国の人々でも、物理的には近くにいるのに得体の知れない他人でも、身近でかけがえのない人々にしてくれる魔法のような装置」と呼ぶ。
それがね、なんか、嬉しかった。
フィクションの一番の目的は、暇つぶしだと思う。
寂しさとか物足りなさを埋めるもの。いっとき現実を忘れて慰めるもの。
でも、銀の匙SilverSpoonが、農業高校=馬鹿学校のイメージを塗り替えたように、フィクションは時に、その先を変える力がある。
ああでも、この本の真面目なところはごくちょっぴりで、たいていは異文化ジョークだから。
たとえばロシアのお客さんを招いてビールを頼むするとき、エビスビールは注意しなければいけない。なぜならエビスはロシア語でFuckの命令形だから(わあぉ!)だとか、日ソ国交回復後、日本大使館の場所が悪かったのでクレムリン宮殿をのぞむ最高のロケーションをお勧めされたが日本は即座に断った、理由は住所。それは、「モスクワ市ヤキマンコ通り」(わあぉ…)
とかそういうのが基本だから!(笑)
フィクションに関してもうひとつ。
「イラン人は面白すぎる」エマミ・シュン・サラミ
少年時代に日本に来て、今は吉本でお笑いやってる(!)イラン人が書いた本。
イランがイラクと戦争してた30年ほど前。
欧米文化が厳しく統制されていたけれど、外国からビデオを持ってきた人が友人を集めて家のリビングで映画を見たりしたそう。エンターテインメントを渇望する大人たちは大興奮。ラブシーンは拍手喝采、格闘シーンでは「敵は左だ!」「そこでキック!」とヤジが飛ぶ。
それは銃撃戦でも同じでわあわあ応援するのだが、と、当時まだ子どもだった著者は続ける。
「外ではうんざりするくらいイラクとの銃撃戦が繰り広げられているのに、フィクションだとなぜ楽しめるのだろうと子ども心に不思議に思っていた。実際、アクション映画を存分に満喫したあとに、国営放送で戦地の映像を観た大人たちのテンションの下がりようといったらなかった。」
この章はここがオチで、クスっと笑ってしまう。
でも、ここに、人が人であるとはどういうことか、とか、フィクションに何の意味があるのか、とかの、本当のところがあるような気がしました。
私は戦いは嫌で、ボクシングとか殴りあう競技もぜんぜん見たくないのに、アクションやバトルは好き。
戦争反対と言いながら戦争アニメが好きってどういうこと?とか若い頃に首をかしげたりもしたし、戦争を楽しむってことに、どこか良くないことなんじゃないかって心のひっかかりがあった。
でも実際、リアルの銃撃戦は嫌だ、という気持ちと、映画の銃撃戦は面白い、という気持ちは、矛盾しないんだなあと。
私は、お馬鹿なバトル映画を観てゲラゲラ笑ってもいいんだなあ、って。
あ、もちろんこの本を手にしたきっかけは、アルスラーン戦記がイランでも評判って話から。
あと、著者が最初に住んだのが十勝で市長さんが豚丼おごってくれようとしたのにイスラム教は豚ダメだからお肉除いてタレごはんになった、って話に、銀匙つながり!とか喜んでみたりw
ちなみに著者さんはその後カツ丼がっつり食ってます(笑)
ほか、ちょっと前に読んだ本ですが。
新書では、「わかりあえないことから」平田オリザ著
この本を読んだきっかけも鋼です。鋼が特集された本で、鋼と関係ない記事だったけど変わった名前の人がいるなーってぼんやり覚えてて、手に取ったという。
この本も腑に落ちまくりって感じでした!
小説では、「帰ってきたヒトラー」ティムール・ヴェルメシュ著
現代によみがえったヒトラーは物真似芸人と間違われ…。時代錯誤の可笑しさとカリスマと狂気と人間味。
最高に!面白かったです!!
ほんのりでもヒトラーについて知識ある方向け。私はシャンバラの前に「エドの飛ばされた世界を知らなければ!」とWeb横断して知識収集してたので(笑)話が分かりました!
映画になったのでぜひ日本でも公開してほしい…!
ノンフィクションでは、「謎の独立国家ソマリランド」高野秀行著
著者惚れして過去作も順に追ってしまうほど面白可笑しい。この続編はダ・ヴィンチアンケのノンフィクション部門にランクインしてます。
この本のきっかけも、絨毯に座って大皿料理を食べてるヒゲ男たちの写真がちょっぴりアル戦ぽかったからw